こんにちは。市川市行徳の杉澤デンタルクリニック行徳の杉澤です。
歯周病は細菌による歯周組織への感染により起こります。感染により炎症が生じ、歯周病が進行すると、歯を支える歯槽骨という骨の吸収が生じてしまいます。その吸収がさらに進行すると、歯は支えを失いぐらつき始め、さらに進行すると抜けてしまいます。その失った骨などの歯周組織を再生させる治療が歯周組織再生療法です。今回はその歯周組織再生療法について書いていこうと思います。
【歯周組織再生療法の適応症】
歯周病の進行で歯を支える骨が吸収するのですが、その吸収パターンは2つあります。それは水平的に吸収していくパターン(水平性骨吸収)と、部分的に垂直的に吸収するパターン(垂直性骨吸収)があります。例えて言うなら、何本かの花を支える土が全体的になくなっていくのと、一部のお花の周りの土だけなくなっていくようなパターンです。
まず、水平性骨吸収のような吸収形態において、歯周組織再生療法による骨の再生は期待できません。垂直性骨吸収において、吸収した骨の周りにどれだけ骨が残っているかで、歯周組織再生療法による骨の再生が期待できます。
【歯周組織再生療法とは】
歯周組織の再生とは、主に歯周病によって失ってしまった歯周組織を再生させる治療法になります。その歯周組織とは主に歯を支える骨(歯槽骨)と歯根膜、セメント質になります。ここでkeyになるのが、歯根膜という組織で歯の表面のセメント質と歯槽骨の間のクッションや歯にかかる力を感知する働きがあります。この歯根膜から骨を作る骨芽細胞やセメント質を作るセメント芽細胞、歯根膜を作る線維芽細胞が生まれてきます。よって、歯を支える歯周組織を再生するためには歯根膜へ骨芽細胞や線維芽細胞、セメント芽細胞を多く作ってもらうよう働きかける必要があります。
~再生とは~
細胞工学における組織の再生において、必要な3つの要素に細胞(Cell)・足場(Scaffold)・成長因子(Growth Factor)があります。その3つの条件がすべて整って再生が起こるわけです。
1.細胞 : その組織を作る細胞です。歯周組織の再生においては骨芽細胞・線維芽細胞・セメント芽細胞がこれにあたります。
2.足場 : 細胞が組織を作るスペースにあたるところです。ほかの細胞が入って来てしまうと違う組織ができてしまいます。また、その足場がないと再生するスペースがないため単純に組織がなくなってしまいます。
3.成長因子 : その組織を作り細胞の成長を促進し、組織再生を促します。
【再生療法の材料】
〇自家骨 : 最も安定した再生療法材と思われます。自分のものだし、その中には細胞も成長因子もあり、ゴツゴツした骨を詰めることにより足場にもなりえます。しかし、その自家骨自体が多く取れないことに問題があります。
〇他家骨
自家骨同様に歯周組織の再生に必要な細胞や成長因子が存在し、そのものが足場となりえる特徴があります。量にも制限が少ないメリットはありますが、他人のものになりますので、未知なる感染症など不安要素があります。当クリニックでは選択しておりません。
〇エムドゲイン
ブタの歯胚組織を用いた歯周組織再生療法材である。歯胚とは歯や歯周組織の発生過程における最初の組織です。その歯胚の中のタンパク質(エナメルマトリックス蛋白質)を用いて、失った歯周組織の再生を促進させる方法です。メリットとしては、量の制限が少ない。デメリットとしては骨の吸収形態に限界があります。これ自体は再生に必要な足場としての役割は小さいためです。また、保険外診療になるため高額になります。
〇リグロス
リグロスは組換え型ヒトbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)という成長因子を含む、世界初の歯周組織再生医薬品です。厚生労働省に認可され、保険診療として用いることができます。歯周組織であり、歯槽骨やセメント質、歯根膜を作る線維芽細胞の成長を促進します。
メリットとしては量的制限が少なく、他の方法に比べ保険内で使用できるため、安価であります。デメリットはエムドゲインと同様足場としての役割が小さいため、これ単独で使用するには歯槽骨の吸収形態によって適用しても再生する効果が期待できない場合があります。
〇Bio-Oss (バイオス)
牛の骨から有機成分を取り除いて作製した骨移植材です。無数の小さい穴が開いていて、周りから来た細胞を留め、再生の足場となります。しかし、有機成分は存在しないため、成長因子としての役割はないです。メリットしては量的な制限は少なく、やや骨吸収が大きい部位でも適用することが可能です。デメリットとしては成長因子を含まないため、周りの組織から細胞や成長因子を呼び込む必要があり、単独で使用するあたり、骨の吸収形態によっては再生が期待できない場合があります。また、保険外での適用の為、高価になります。
【まとめ】
歯周組織再生療法は歯周病によって失われた組織を取り戻すための方法であり、歯周組織再生によって歯の長期的な保存が可能になります。しかし、歯を支える歯槽骨の吸収形態によっては再生療法に限界があり、再生が期待できない場合もあります。また、上記再生療法材を混ぜて用いたりする場合もあります。もちろんそこまで歯槽骨を失わないように定期的なメンテナンスや治療を行う必要がありますが、歯周病が進行してしまった場合には失った歯周組織を取り戻すいい方法でもあります。
杉澤デンタルクリニック行徳では、上記再生療法材(他家骨を除く)を用いて、術前のCT検査やレントゲン診査、歯周精密検査により歯周組織の再生が期待できる場合には、患者様と相談し歯周組織再生療法を行っております。お気軽にご相談ください。
杉澤デンタルクリニック行徳
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